高齢者施設で働いていると、入居者の皆様に喜ばれる音楽を流してあげたいですよね。
どんな音楽を喜ばれるのでしょうか?
私は3つの高齢者施設で15年ほど機能訓練指導員として働いていました。
レクレーションの時だけでなく、入居者様がリビングでくつろいでいる時に懐かしの歌謡曲をかけて差し上げると、とても喜ばれました。
気を付けたいのが、昔の歌謡曲なら何でもよいわけではありません。
高齢者の年代に合わせた選曲が必要です。
高齢者が過ごされた時代は現代に比べて音楽が少なく、年齢層別に好きな音楽がはっきりと分かれています。
年齢さえ分かれば、選曲するのはさほど難しくありません。
そのことについてこれから説明します。
高齢者の好きな年代別の歌謡曲
高齢者の好きな歌謡曲は年代別で分かれています。
喜んでいただくには、その年齢層に応じて曲を分けてかける必要があります。
私は次のような年代別に分かれた歌謡曲のCDアルバムを使っていました。
ぎりぎり80歳代後半ならOK、大正生まれのほとんどの方が楽しまれる歌謡曲
次のアルバムに入っている曲は、大正生まれのほとんどの方が楽しまれました。
ぎりぎり昭和一桁生まれの方までは楽しめるようです。
1925~1945の曲
No. | Disc1 | Disc2 | Disc3 | Disc4 |
---|---|---|---|---|
1 | 君恋し | サーカスの唄 | 別れのブルース | 湖畔の宿 |
2 | あお空 | 片瀬波 | 愛国の花 | お島千太郎旅唄 |
3 | アラビヤの唄 | ほんとにそうなら | 雨のブルース | 新妻鏡 |
4 | 沓掛小唄 | 十九の春 | 旅の夜風 | 目ン無い千鳥 |
5 | 蒲田行進曲 | 山の人気者 | 悲しき子守唄 | 高原の旅愁 |
6 | 麗人の唄 | 急げ幌馬車 | シナの夜 | 蘇州夜曲 |
7 | すみれの花咲頃 | ダイナ | 一杯のコーヒーから | 小雨の丘 |
8 | 酒がのみたい | 並木の雨 | 古き花園 | 熱砂の誓い(建設の歌) |
9 | ニッポン娘さん | 小さな喫茶店 | チャイナ・タンゴ | 紅い睡蓮 |
10 | 酒は涙か溜息か | 船頭可愛いや | 何日君再来 | めんこい子馬 |
11 | 丘を越えて | 雨に咲く花 | 懐かしのボレロ | 夜霧の馬車 |
12 | 影を慕いて | 花言葉の唄 | 純情二重奏 | 南の花嫁さん |
13 | 走れ大地を | 博多夜船 | 白蘭の歌 | 南から南から |
14 | アリランの唄 | 人妻椿 | 誰か故郷を想わざる | お使いは自転車に乗って |
15 | 幌馬車の唄 | 山寺の和尚さん | なつかしの歌声 | お山の杉の子 |
丘を越えて、愛国の花、誰か故郷を想わざる、湖畔の宿、蘇州夜曲、南の花嫁さん、などを口ずさんでいらした入居者様を思い出します。
思い出す入居者様はご存命なら100歳を超えておいでです。
80歳以上だと楽しめる歌謡曲
20年前から今まで施設で一番多くの人が楽しんでくれた曲が揃っています。
多くの曲は、戦前戦中~昭和10年代生まれの方が楽しまれる曲です。
1946~1963の曲
No. | Disc1 | Disc2 | Disc3 | Disc4 |
---|---|---|---|---|
1 | リンゴの唄 | 赤い靴のタンゴ | りんどう峠 | 哀愁波止場 |
2 | 夜のプラットホーム | 東京キッド | 東京だヨおっ母さん | さすらい |
3 | 夢淡き東京 | 白い花の咲く頃 | 港町十三番地 | おひまなら来てね |
4 | 山小舎の灯 | 越後獅子の唄 | 青春サイクリング | ソーラン渡り鳥 |
5 | 懐しのブルース | 森の水車 | 喜びも悲しみも幾歳月 | 山のロザリア |
6 | 東京ブギウギ | あざみの歌 | 東京のバスガール | 北帰行 |
7 | フランチェスカの鐘 | リンゴ追分 | 柿の木坂の家 | 王将 |
8 | 三百六十五夜 | ゲイシャ・ワルツ | 銀座九丁目水の上 | 若いふたり |
9 | 湯の町エレジー | お祭りマンボ | 無法松の一生 | 恋は神代の昔から |
10 | 青い山脈 | 君の名は | からたち日記 | なみだ船 |
11 | 長崎の鐘 | 黒百合の歌 | 人生劇場 | ひばりの佐渡情話 |
12 | 悲しき口笛 | 高原列車は行く | 僕は泣いちっち | 出世街道 |
13 | イヨマンテの夜 | 愛の讃歌 | ギターを持った渡り鳥 | 高校三年生 |
14 | 水色のワルツ | この世の花 | 潮来花嫁さん | 星空に両手を |
15 | 買物ブギー | 逢いたかったぜ | 雨に咲く花 | 学園広場 (曲目・曲順予定) |
80歳代より若い方に楽しまれる曲
昭和20年以降生まれの方が楽しめる曲です。
このころから歌謡曲数は跳ね上がりますので、このアルバムにある曲数だけでは、ぜんぜん足りません。
1964~1989の曲
No. | Disc1 | Disc2 | Disc3 | Disc4 |
---|---|---|---|---|
1 | 柔 | 夫婦春秋 | 心のこり | 大阪しぐれ |
2 | アンコ椿は恋の花 | 思案橋ブルース | シクラメンのかほり | 雨の慕情 |
3 | 愛と死をみつめて | 愛のさざなみ | 面影 | ふたりの大阪 |
4 | 青春の城下町 | 好きになった人 | 北の宿から | 北酒場 |
5 | おんなの宿 | ブルー・ライト ・ヨコハマ | 嫁に来ないか | さざんかの宿 |
6 | ふるさとのはなしをしよう | 人形の家 | 想い出ぼろぼろ | 矢切の渡し |
7 | しれとこ旅情 | 真夜中のギター | 津軽海峡・冬景色 | 浪花恋しぐれ |
8 | 涙の連絡船 | 愛は傷つきやすく | 旅の終りに | 浪花節だよ人生は |
9 | 雨の夜あなたは帰る | さらば恋人 | 氷雨 | 夫婦坂 |
10 | 悲しい酒(セリフ入り) | 真夏の出来事 | 時には娼婦のように | 愛燦燦 (あいさんさん) |
11 | 絶唱 | 女のみち | 夢追い酒 | 天城越え |
12 | 新宿ブルース | 喝采 | おもいで酒 | 津軽恋女 |
13 | 小指の想い出 | 花街の母 | 舟唄 | 人生いろいろ |
14 | ブルー・シャトウ | 街の灯り | おんなの出船 | みだれ髪 |
15 | 真赤な太陽 | ふれあい | 愛の水中花 | 川の流れのように |
私が施設で働き始めた20年前の当時では、ほとんどの入居者に馴染まれなかった新しい曲です。
かわりに歌謡曲に疎い私も聴いたことのある曲ばかりです。
これから老人ホームに入ってこられる方には喜ばれると思いますが、これだけでは全く足りないでしょうね。
このころの世代の方から、日常に音楽があふれてきたのだと思います。
曲数も圧倒的に増えてきたので、1960年以降にヒットした曲なら何でも楽しんでいただけると思います。
年代別のアルバムが必要な理由
年代別のアルバムが必要な理由です。
- 高齢者は年齢に応じて、好きな歌謡曲がはっきり分かれるから
- 高齢者は知らない歌謡曲にはほとんど興味を持たれないから
- 高齢者の10~30歳代のころに聴いた曲にヒットしなくてはならないから
- 高齢者の時代(1950年まで)は曲が少なく1つの曲に対する思いが強いから
次はこの理由に至った経緯です。
童謡ばかりが流れるリビング
私が最初に勤めた高齢者施設の話しなので20年前のことです。
施設の日常生活では、各個人の居室でなく共有のリビングルームでくつろいで過ごされる方が多かったです。
そこではスタッフが気を利かせて、CDラジカセで音楽を流してくれるのですが、ほとんどが童謡といったものでした。
正直、私には幼稚園、小学生でもあるまいしこれはないな、と思えました。
他の音楽CDを探すのですが、ほとんどが童謡で、あとは少しの抒情歌とクラシックです。
スタッフは疑問なくそれらの音楽を流しています。
優しいスタッフは時間があると一緒に童謡を歌っていました。
そして入居者もとても楽しまれているようでした。
とても微笑ましい風景なのですが、私にはどうしても子ども扱いに見えて複雑な気分でした。
流れている童謡に不満をいう入居者はいませんでしたので、いつも同じ童謡がリビングには流れているのです。
当時の高齢者施設では、よくある風景でした。
今もまだレクレーションの時だけでなく、童謡がながれる施設もあるのですよね。
高齢者の好きな音楽が分からない
音楽CDの中古販売で、懐かしの昭和の歌謡曲と題しているCDを見つけたので、共有リビングに流してみました。
大絶賛でした。
しばらくみんなが歌に夢中で、時には口ずさみながら聴いていました。
私はかなり驚きました。若いスタッフも驚いていました。
その時に初めて入居者は、童謡だけでなく歌謡曲を聴きたいのだとわかりました。
本当に聴きたい歌があるのですね。
そこで入居者の好きな曲を流したいのですが…
困ったことに私はほとんど古い歌謡曲を知らないのです。昔の歌手や曲名がわからないので他のスタッフに尋ねても、若い彼ら彼女らも知りませんでした。
そこで入居者に訊くのですが、
藤山一郎?
えっ?だれ。
東京ラプソディー?
聴いたことないです。
青い山脈?
ああ聞いたことがあります。
でも誰の歌?
といった感じです。
高齢者の好きな曲探し
レンタルCDで古い歌謡曲の入ったアルバムを借りて、何枚かのCDを流してみました。
好きな曲が流れると皆が嬉しそうに曲名と歌手の名前を教えてくれます。
そうやって少しづつ入居者の好きな歌手名と曲名を覚えていきました。
お陰で好きな歌謡曲ができました。
昔の歌謡曲は歌詞と曲がとても聴きやすいです。
そしてとても歌いやすいです。
当時の施設では、明治生まれの方もまだ多くいらっしゃいましたが、大正生まれの方が大半でした。
それで分かったのですが、明治の方はあまり歌謡曲というものに興味を持たない方が多かったです。
知っている曲をお聞きすると童謡か、いわゆる抒情歌でした。
そもそも曲が少なかったのですね。日常に音楽が流れることがなかったようです。
だからでしょうか。
高齢者の好きな音楽は童謡と抒情歌と思われていたのは?
歌手より曲名が大事
誰の歌が好きなのか尋ねると、例えば、二葉あき子が好きと何人かの入居者が答えられました。
そこで、二葉あき子のCDアルバムを用意しましたが、好きな人でもこの中の2~3曲を知っているだけで、ほとんどの人はその有名な曲だけに興味があるのでした。
多くの人は、歌手よりも曲が好きなのだとわかりましたので、好きな歌手を探すのでなく好きな曲を探しました。
生まれた年代が同じだと大体、好きな曲が同じということも分かりました。
それほど曲が少なかったのですね。
結局、年代別に曲を集めたアルバムが便利
高齢者は、はっきりと年齢層で好きな曲が分かれます。
もともと曲数が少ないので、一曲に対しての思いは驚くほど強いです。
だから、その当時は選曲を間違えられなかったです。
そういった理由で、高齢者には年代別に曲を集めてあるアルバムがあると便利です。
年齢に応じてアルバムをかけてあげてください。
これからの施設での音楽
高齢者施設はそこで働く若いスタッフにとってジェネレーションギャップのルツボです。
とくに音楽に対する世代差はすごいです。
スタッフはこれからの高齢者にも、音楽を用意する必要があるのでしょうか?
私は時代はすでに変わっているので、必要がないと思います。
これからの高齢者は、日常に音楽が流れているのが普通の時代を生きてきました。
知らない曲が流れているのが当たり前です。
同じ世代でも、好きな音楽は全く異なったりします。
それだけ選択肢が多くなったのですね。
自分の聴きたい音楽は各居室かヘッドホンで、各自のオーディオ装置で楽しまれる世代になっていると思います。
その代わりに自分の好きな曲を聴くだけでは足りなくて、どの施設もカラオケが必要になると思います。
おわりに
ここでの話しは高齢者施設でのことですが、音楽に疎い私でも音楽で喜んでもらえた貴重な体験でした。
ですがこれからの高齢者(シニア世代)は、自分たちで音楽を聴くことに慣れていますから、私の体験のように簡単に喜んでいただくことはできないのでしょう。
たとえば、スタッフが一緒にカラオケをするなどが必須になるのかもしれません。
シニア世代は本当にカラオケが好きです。
カラオケが初めてのシニアもすぐに熱中してしまいます。
それだけ音楽があふれた時代を生きてきたのですね。
反対に今回紹介したアルバムが有用な世代には、お早く聴かせてあげてください。
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